リードを沢山持っている企業はバーチャル展示会をどのように活用すれば良いか
3DCGの技術を使い、リアル展示会のような世界観をWEB上で表現しているバーチャル展示会。現在は、主に製造業など展示物を見せる用途の展示会を中心に活用されています。
リアル展示会の中止が相次いだことにより、その代替としてリード獲得や新製品の発表の場として、バーチャル展示会が活用できることを期待されています。
ウェビナー中心のオンライン展示会と比べて、コンテンツ作成や素材の準備にも時間が掛かる一方、出展社からは「ブースには来場者が来てくれない」「なかなか商談などに繋がらない」といった声をよく聞きます。
成功事例を聞かないと感じていましたが、バーチャル展示会においてリアル展示会の2倍以上の商談件数を獲得したという事例を耳にしました。
バーチャル展示会のプラットフォームを開発し、出展企業を支援された株式会社キャドセンターの冨永様に、詳しいお話を伺いました。
製品を見せることを中心に考えている出展社様で、今までの展示会で見込み顧客リストが比較的多いにも関わらず、なかなか営業活動に活かせていないと感じている方にご覧頂きたい内容となっております。
それでは、インタビューをどうぞ!
目次
インタビューにご協力いただいた株式会社キャドセンター冨永様のご紹介
バーチャル展示会の出展目的を突き詰めることで成果が出た事例
いきなりですが、2020年11月17日~11月27日まで開催された「JIMTOF2020 Online」※にて、ご支援された三菱マテリアル様では前回のリアルで開催された「JIMTOF2018」の約2倍以上の商談件数に繋がったとお聞きしました。成功要因はどのようにお考えですか?
※JIMTOF2018は2018年11月1日~11月6日の6日間で開催。JIMTOF2020 Onlineは2020年11月16日~11月27日の12日間開催(アーカイブ期間2020年11月27日から12月11日の16日間)
今までのリアル展示会では、商談数が大事だという意識を持っている出展社様は少なかったと思います。会期中はお祭りのように盛り上がり、大きな問題もなく終わることが大事でした。でも今回のコロナ禍を機に考え直したところ、”向こう2年間の商談のきっかけを短期間で獲得しなければならないこと”に気づかれたのだと感じました。成功要因は目的の定義にあると思います。
お客様はその目的にどのように気付かれたのですか?
こちらでも課題を抽出したかったので、リアル展示会の成果についてストレートにヒアリングしました。今まで何件ぐらい商談を取れていましたか?来場者どれぐらいですか?といった質問をしていきました。
バーチャル展示会のプラットフォームの提供に加え、お客様の展示会に対する意識を変えることができたことが御社の大きな価値だったように思います
誰もやったことがない施策の目的を明確にせずに行った場合、ここまで成果が出なかったと思います。
ディスカッションを通して、目的を明確にできたことが大きいということですね。開催の成功に導けたポイントは他にも何かありますか?
事前準備のプロセスを明確にできたことですね。製作において全ての工程をスプレッドシート1枚に書き出し、分科会方式で運用しました。例えばMAツールの運用やCGの作成などの各工程をにどのように進めていくかというのを1枚の巨大な工程表にして管理しました。先方は10数名参加されていたので、各担当の責任者を立てて責任の所在をはっきりさせたことはポイントだったと思います。全ての工程を同時並行で進めていくことでスムーズにプロジェクトを推進できました。
なるほど!かなりの人数を掛けてプロジェクトを進められていたんですね
そうですね。そこは大きかったと思います。多くの出展企業様ではオンラインで開催になった場合、プロジェクトの担当が少人数で進められるケースもあり、担当1名ということも少なくありません。そうなるとできることに限りがあります。体制作りはオンライン展示会においても非常に重要だと感じました。
製造業のオンライン展示会に出展された企業様はあまり成果が芳しくなかったというご意見が多いです。その中で結果を出されたのは凄いと思います
実は「次回もお願いします」と言って頂けました!
先方の展示会に対する意識を変えたことに凄さを感じました。そのノウハウは、御社内で共有されているのですか?
まだ道半ばですが、共有しています。元々弊社は、技術志向の強い企業ではありますが、マーケティング人材を採用したり、私のような人材がグループから異動してきたりと変わりつつあります。マーケットイン的な要素を会社に根付かせたいという思いがあります。
デジタルは全部効果測定できてしまうので、そこを軸に価値を考えて、相手に伝えるというところを営業の文化として根付かせていきたいです。今回も終わった後に「来場者の行動をすべて計測できるところが良い」と評価頂きました。弊社としてもデータの活用は強みにしていきたいところです。
バーチャル展示会は必ずしも新規見込み顧客の獲得の場ではない
バーチャル展示会において、出展社が求められていたことはどのようなことなのでしょうか?
リアルの展示会同様、やはり「新規リードの獲得」が必ず上がりました。しかし、突き詰めていくと、実は既に持っているリストの中からホットリードを抽出したいということがわかりました。目的が変われば展示の中の演出や計測の仕方が変わります。ここで目的の共通認識ができたことは大きかったと思います。
根気のいる打ち合わせになりそうですね(笑)
お互いストレスの溜まるやり取りだったと思います。でも大事なことなので、こちらも引けませんでした。新しいリード情報が欲しいのであれば、通常のWEBマーケティング施策の方が効くと思います。バーチャル展示会はさらに会社や製品を詳しく知ってもらい、関心を持って貰う方に向いています。バーチャル展示会は、今までのリードからホットリードを抽出するために活用する方が効果的だと考えています。
バーチャル展示会の出展目的の共通認識を持つことが重要ということですね
そうですね。私は以前にグループ会社でリアル展示会の支援を行っていたこともあります。リアル展示会では成果のことをあまり考えず、しかも効果測定や振り返りをせずにやってきたのかということを再認識しました。リアル展示会では、成果を計測することが非常に難しいです。
しかし、バーチャル展示会だと多くのことが数値化できます。例えば、来場者が何秒間ブースに滞在して、何秒を超えると離脱が多くなるというのもわかるじゃないですか。
確かにデータの可視化ができますよね
マーケティングオートメーションと連携しているので、招待客が来場したかどうかが目に見えてわかります(笑)
リアル展示会の高揚感は否定するものではないのですが、売上とどう結びついているのと言われたら、答えられない方も多いと思います。
出展社ごとに見せ方を変えられる「バーチャル展示会プラットフォーム」
御社の「バーチャル展示会プラットフォーム」はどのような特徴がありますか?
一番の特徴は、WEBブラウザで視聴できる点です。早い回線やサーバーを使うことなく、事務用のパソコンやスマートフォンでも閲覧ができるように開発しました。
当初は、「非接触」「コロナ対策」という言葉が飛び交っていました。非接触対策の製品をいくつか出す中で、バーチャル展示会も感染症対策で考えていました。しかし、商談を重ねていくうちに、効果が可視化できることが価値だと気付きました。営業の中でのヒアリング内容を受け、最初の受注案件でお客様の課題などを把握することが出来ました。
パッケージ販売ではなく、1社1社開発されているんですか?
1社1社ほぼカスタマイズです。今まで10個近くやっているのですが、型紙販売で売れたのは1つだけです。
その理由は何でしょうか?
開発当初はパッケージ販売にしようと考えていました。しかし、当初リアル展示会同様に小間の大きさによって金額を変えていたのですが、その方法がバーチャル展示会ではまりませんでした。また、企業様によって製品を見せたい方法が異なるので、それをバーチャル展示会は商品上どう反映させるかという機能のばらつきは出ます。
具体的にはどのようなやり方がありますか?
製品を360度回転させるのか?空間の中に並んでいれば良いのか、動いた方が良いのか?これは製品や展示方法によって変わります。
今後キャドセンターが考えるバーチャル展示会の未来とは
現状、オンライン展示会はコンテンツが面白くないという意見もあります。それについて対応策はありますか?
お客様が参加して面白くなければ成果になかなか繋がらないと考えています。製品を見せる工夫が出来たり、実際の空間上ではありえない造形ができるというのが3Dの楽しみです。例えば、空間上で飛行機が飛ばしたり、重心のバランスがおかしい建物を置くことも可能です。
このように、来場者に楽しんで頂きながら何かを感じ取ってもらうことが重要だと考えています。この辺りは博物館などの実績を通して得た知見からくる弊社の強みです。
バーチャル展示会は今後どのようになっていくと考えていますか?
コロナが落ち着いても、リアル展示会と並行して、バーチャル展示会に出す企業が増えていくと思います。リアル展示会に来場したとしても、回った全てのブースやセミナーの情報は覚えていない方が多いと思います。来場者が家や会社に帰った時に、同じような空間がバーチャル上にあり、振り返りができます。また、「あそこの資料を貰い忘れた」ということも起こるので、資料をダウンロードできます。リアル展示会とバーチャル展示会の併用は、今後定着していくと思います。
出展社側は、お客様のリアクションが目に見えてわかるというメリットがあり、マーケティング活動のプラスになる1つのツールという打ち出し方ができるのではないかと考えています。
御社製品「バーチャル展示会」の今後の展開を教えてください
展示会という用途に加え、常設のショールーム、工場見学というニーズも少なくないんです。この3つを商品に分けていこうと考えています。今は「バーチャル展示会」のみですが、例えば、「バーチャルショールーム」や「バーチャル工場見学」と製品名を分けて、お客様が理解しやすいように用途に応じたご提案をしていきたいと考えています。
最後にバーチャル展示会に興味を持っている方や今後出展される方々にアドバイスはありますか?
バーチャル展示会に出展し、何を得たいか「目的」を決めることが大事だと思います。私達が展開しているウェビナーでは、その点を重点的に伝えています。「既にあるリストの見極めのためにこの大掛かりな取り組みをやるんですよ」と言い切っています(笑)