インサイドセールスのやり方がわからないから真似をする?
インサイドセールスって何?テレアポではダメなの?
このような問いはここ数年繰り返されてきたのではないでしょうか?
また、MAツールを導入しても、実際にはテレアポと変わらないという企業も多いのではないでしょうか?
2019年1月に、マルケトの日本法人(現在はアドビ システムズが買収)の立ち上げから代表取締役社長として参画されていた福田康隆氏が「ザ・モデル」を執筆し、話題となりました。
インサイドセールスを導入している企業はこぞって参考にしたと言われており、「インサイドセールスのバイブル」になっています。
もちろん私も何度も拝見しています。
マーケティング~カスタマーサクセスまでのプロセスを可視化し、営業の効率化を図った手法を確立したことは言うまでもなく多大な功績です。
専門家としての意見だけではなく、現場を経験していなければ気付かないノウハウも提供しており、実務面で参考になる部分も多いです。
しかし、福田氏自身も著書やインタビュー記事などでも述べている通り、このモデルをそのまま自社に展開しても、成果に繋がるとは限りません。
では、どのような企業であれば「ザ・モデル」に適しているのか?
適していない場合はどのように変えていく必要があるのかという疑問に対して私なりの解を用意したいと思います。
今回読んで頂きたいのは以下のような方です。
- インサイドセールスが上手く機能していないのではないかと感じている
- 「ザ・モデル」を読んで活用したいと考えたが、なかなか自社に取り入れられていない
- 自社に合ったインサイドセールスのやり方を知りたい
ぜひ御社のインサイドセールスで成果を上げるために、何かヒントになれば嬉しいです。
「ザ・モデル」が生かせる組織とは
福田氏は、オラクルからセールスフォース・ドットコム、そしてマルケトの代表へとキャリアを積んでいます。
どの企業でも素晴らしい実績を残しており、能力は疑う余地がありません。
しかし、どの企業でもニーズは見えており、「ターゲットに対して、いかに効率的に営業をするか」が課題だったと思われます。
もちろん、簡単に売れたわけではないでしょう。
セールスフォース・ドットコムにおいて、「日本ではERPのような業務を回す上で必須なシステムは導入されても、CRMのようなあると便利だが、必ずしも必要なシステムではなく、導入が難しい」という意見があったと書かれています。
それを日本でのプロセスに展開するうえで改良し、プロセスを再構築しました。
アメリカ本国においてはニーズが見えており、販売プロセスがある程度確立したのです。
そのため、「ザ・モデル」に書かれているインサイドセールスは、営業プロセスの効率化についての言及がほとんどです。
もちろん、共通するような製品やサービスであれば自社向けに流用することも可能だと思います。
しかし、多くの企業では流用できないのではないかというのが私の考えです。
「ザ・モデル」に適した条件
では、「ザ・モデル」を生かせる条件とはどのようなものでしょうか?
ここから先は主観が混じるかもしれませんが、1つの意見と思って読んでください。
- 営業プロセスが確立されている
- 市場が限定的ではない
- ダイレクトマーケティングを行っている
- インサイドセールスでも売れる
営業プロセスが確立されている
セールスフォース・ドットコムは、アメリカで既にマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスの分業体制による営業を確立していました。
その手法を日本に展開したのが「ザ・モデル」です。
もちろん、日本ではアメリカとも違う部分もあったと思います。
- 日本ではCRM市場がまだ温まっていなかった
- オンライン商談が浸透していなかった
- 代理店の販売網を頼り、SMB市場の直販は効率が悪いというのが当たり前になっていた
しかし、潜在ニーズとしては存在しており、アメリカでの成功モデルもあった。
その中で、日本に合わせて改善し、成功モデルを再構築していました。
また、オンライン商談も、周囲からの抵抗はあったものの、顧客にはそこまで抵抗なく受け止められたようです。
SMB市場についても、福田氏自体は日本でのSMB市場攻略の経験がなかったことにより、抵抗なく直販を進められたと書かれています。
経験が無いことが、他社との販売手法における差別化を築けるきっかけになったようです。
市場が限定的ではない
「ザ・モデル」の導入メリットは、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスの分業化による営業の効率化です。
インサイドセールスを行っていると、リードジェネレーションを得意としている一部の企業以外、リストを増やすことが大きな課題です。
ある特定の市場に特化した製品を販売している場合、リードがすぐに枯渇します。
そのため、営業の効率化の恩恵は少ないです。
また、戦略的にターゲットを絞り込んでいれば、他の製品も取り扱っていることも多いでしょう。
訪問し、新製品開発にも生かせるように様々な情報を得ることも有意義です。
ダイレクトセールスを行っている
インサイドセールスは顧客情報を獲得し、顧客の行動を見ながら、必要な情報を提供しながら顧客育成をし、必要な時に商談化させるプロセスです。
代理店施策をメインにしていれば、ほとんどの場合は代理店が顧客情報を提供することはありません(代理店の強みの源泉だからです)。
そのため、エンド顧客の情報を得ることが出来ないのであれば、インサイドセールスはほとんど意味がありません。
販売代理店はライバル企業の製品も取り扱っているケースは珍しくありません。
販売代理店のニーズを把握し、売れる仕組みを作り、動いてもらうためのインセンティブを構築しなければなりません。
今ではIT企業でもダイレクトセールスを行っている企業も増えています。
そのような企業であれば、「ザ・モデル」型のインサイドセールスも活用できると思います。
販売代理店も訪問営業に向いています。販売代理店は、既にエンド顧客へのアプローチはできる状況です。
ほとんどの販売代理店は、1つの製品だけを売っているわけではありません。
この場合、訪問して沢山の製品の中から顧客に合った製品を提案する方が成果に繋がります。
インサイドセールスでも売れる製品
前回の記事では、インサイドセールスの概要を説明しています。
インサイドセールスとは―獲得したリードを最大限に活用する
その中でも説明していますが、インサイドセールスが注目されている背景として、サブスクリプションモデルの台頭を挙げています。
サブスクリプションモデルにより、今までよりも導入費用が下がりました。そして導入のハードルも下がりました。
そのため、営業1名当たりが対応する顧客数が増えることになりました。
また、安価なサブスクリプションモデルでは、1件当たりの営業コストを下げなければ利益を上げられないケースも出てきます。
この2つの背景により、オンライン商談でクロージングまで行うケースも増えており、「ザ・モデル」に相性が良いと言えます。
知られざるインサイドセールスの目的とは
これまでは、「ザ・モデル」を展開しやすい条件についてお話してきました。
これからは、逆に展開しにくいケースについてお話していきます。
前項で説明した通り、販売プロセスが既に確立している企業の場合は、営業効率が課題になります。
ここでは市場ではまだ認知されていないようなケースを考えていきます。
新規性の強い製品やビジネスモデルをイメージしてください。
このようなケースでは、顧客との接点をまず作り、以下のようなことを認知してもらう必要があります。
- ターゲット顧客のどのような課題にアプローチしているか(潜在ニーズ)
- どのような解決策を提供しているか
- これによりどのぐらいの効果をもたらすか
既に実績があり、この3点が明確になっている場合はその通りに進めていけば良いと思います。
しかし、新規ビジネスを行う場合、上記の3点は仮説構築が必要です。
顧客データもそれほど集まっていないため、コンテンツの量も少ないでしょう。もちろんリスト数も極めて限られるでしょう。
そのような場合、課題は営業の効率化ではなく、仮説の精度を上げていくことになります。
そして、インサイドセールスの目的は、テストマーケティングの意味合いが強くなります。
テレマーケティングでも、BANT条件を得ることはほとんど意味がありません。
新規性の強い製品では、顧客ニーズが顕在化しておらず、当然予算化もしていないからです。
顧客育成をしようにも、その方向性が定まっていないのです。
このように、インサイドセールスにおけるキーである「デマンドジェネレーション」を回すのが難しいのです。
また、フィールドセールスにおいて求められることは以下のような営業です。
- 仮説精度を高めていくために、顧客に仮説をぶつけて検証する
- 潜在ニーズを顕在化していく
既に営業プロセスが確立している企業とは求められる営業が大きく異なるのです。
このため、「ザ・モデル」を展開するのは難しいのです。
従って、展開する前に、自社のビジネスがどのステージにいるのかを理解している必要があります。
市場を掘り起こす時期なのか、営業を効率化して販売を加速していく時期なのか。
この2つを見極める必要があります。
当社のビジネスモデルで考える
当社は展示会支援事業を行っています。
「展示会支援」というビジネスの歴史は新しくありません。
主なプレイヤーはブース装飾等、展示会の準備を支援する企業でしょう。
展示会支援の営業は、タイミング情報が取りやすいです。
出展展示会を把握し、その数か月前からアプローチを掛け、コンペに入っていくというのが王道の営業でしょう。
ニーズが顕在化しているので、各社はインサイドセールスでもタイミング情報を取り、しかるべきタイミングで再アプローチしていると思います。
展示会支援という事業でも、当社が展開している「展示会コンサルティング」という領域は、新規性が強いビジネスモデルです。
「展示会への出展」に予算は付いていても、「展示会で成果を出す」ことに予算がついている企業はほとんどありません。
活動の成果も出てきており、ようやく「展示会から成果に繋げる」ことに意識が向いてきた企業も増えています。
しかし、まだまだ「獲得名刺数」をKGIにしている出展社も多く、この認識を変えていくような営業をしなければなりません。
そして、顧客の抱える潜在ニーズに対して仮説を立て、検証を続けています。
そのため、当社のようなビジネスモデルにおいて、「ザ・モデル」の展開は非常に難しいのです。
最後に
今回は、インサイドセールスのやり方と題して、「ザ・モデル」を参考にインサイドセールスを構築している方向けに「なぜそのままだと使えないのか」について説明してきました。
今、インサイドセールスが上手くいっていないという方はもちろん、これからインサイドセールスを構築していくというご担当者様にも参考になればと思います。
もしインサイドセールスへのお問合せもございましたら、ご連絡をお待ちしております。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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